宅地建物取引士(宅建士/Real Estate Transaction Agent)とは、宅地建物取引業法に基づき定められている国家資格者であり、宅地建物取引業者(一般にいう不動産会社)が行う、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の取引に対して、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に法に定める事務(重要事項の説明等)を行う、不動産取引法務の専門家である。
上記の様に、宅地建物取引業者は宅地又は建物の売買、交換または賃貸借の契約が成立するまでの間に、取引の相手方に対し一定の重要事項について宅地建物取引士による重要事項説明書の交付と説明をなす義務があり、これが宅地建物取引士の最も重要な職務である。この重要事項説明書の交付と説明に当たり、宅地建物取引士が説明義務を果たさず、相手方に損害を与えたときは、単に宅建業者のみでなく宅地建物取引士個人も共同不法行為者として損害賠償の責任を負う。
宅地建物取引士(宅建士)にしかできない3つの仕事内容(独占業務)とは?
- 法律上、宅建士の資格を持っていなければやってはいけない業務(独占業務)が3つあります。
- 1.重要事項説明書面への記名と押印
土地や建物のことを不動産といいますが、この不動産を宅建業者(いわゆる不動産会社のこと)が売買したり交換したりする場合や、顧客から依頼を受けて不動産の取引の媒介をしたり代理をしたりする場合には、宅建士の資格を持っている人に対象の不動産の情報が記された重要事項説明書面に名前を書いてもらい(記名)、印鑑を押してもらわなければ(押印)なりません。
- 2.重要事項説明書面の内容の説明
次に、宅建士が記名・押印した重要事項説明書面の内容について、宅建業者は取引の相手方等に対して説明しなければなりません。その際、説明できるのは、宅建士の資格保有者だけとなっています。不動産会社の社長といえども、宅建士の資格を持っていなければ重要事項説明をすることはできません。
- 3.37条書面(契約書面)への記名と押印
重要事項説明が終わり、当事者双方がその内容に納得すれば、売買契約や交換契約、賃貸借契約に進みます。この契約は、民法という法律上、口約束でも効力が生ずるのが原則となっています。ただ、宅建業者がかかわる不動産取引の場合、契約後にそれを証する書面を作成して契約当事者双方に交付しなければならないことになっています。
37条書面とは、宅地建物取引業者が不動産取引に関与して契約が成立した場合に、当該業者が取引当事者に交付しなければならない書面。この書面の交付は、宅地建物取引業法第37条の規定に基づく義務である。
交付する書面には、代金または借賃の額、その支払方法、引き渡しの時期など法律に定める主要な契約内容(売買・交換の場合と賃貸借の場合とで異なる)を記載するとともに、宅地建物取引士が記名押印しなければならない。
「重要事項説明書面への記名・押印」「重要事項説明」「37条書面への記名・押印」を宅建士にさせなかった場合には、宅建業者が業務停止処分等の制裁を受けることはもちろん、契約自体が無効となったり、損害賠償責任が発生したりすることにもなります。
宅地建物取引士(宅建士)が活躍する業界
- 宅地建物取引士(宅建士)は、宅建業者以外でも宅建士の資格やその知識は様々な業界で活躍できます。
- 1.建築関係
建築会社ではもちろん建築士の資格が重要ですが、自社で建築した物件を当事者として販売するには宅建業の免許が必要になるので、実は事業拡大を考えている建築会社では宅建士の資格も推奨しているのが通常です。
- 2.金融関係
銀行をはじめとする金融機関では、宅建士の資格、さらにはその上の不動産鑑定士の資格が重視されます。不動産を担保評価して融資することが多いからです。また、都市銀行のほとんどがグループ会社に不動産販売会社を有しており、不動産の知識なくして銀行は成り立たないと言っても過言ではありません。
- 3.駐車場関係
コインパーキング等の駐車場経営をする会社でも宅建の知識は重要です。駐車場の賃貸借契約自体は宅建業法も借地借家法の適用もないのですが、マンション経営も行うビルのオーナーなどが顧客であることが多く、付随して不動産投資や売買等の相談を受けることがあります。従業員に最低限の宅建の知識が必要とされるので宅建士の資格は重宝されます。
- 4.不動産管理会社
マンションを販売し共益費等の管理業務をするには管理業者の免許が必要です。法的には宅建業とは別の領域なのですが、最近では、不動産を仕入れて、分譲の仲介をして、さらにその管理も行うというトータルサービスを提供する宅建業者が増えています。不動産を仕入れ販売の仲介をするには当然に宅建業の免許と宅建士の資格が必要となります。
宅地建物取引士(宅建士)は、不動産の売買・賃貸というゴールだけでなく、それに至るまでの不動産の仕入れ、保険会社等との交渉、顧客への金融機関のあっせんというプロセスでのリーダーシップと、消費者に対する不動産取引法務のプロとしての対応が求められています。
宅地建物取引士に関するデータ
- 宅地建物取引士 年度別人数の推移
宅地建物取引士 年度別人数の推移(クリックして拡大)
(一般財団法人不動産適正取引推進機構 統計データより)
- 宅地建物取引士 年齢階層別人数
宅地建物取引士 年齢階層別人数(クリックして拡大)
(一般財団法人不動産適正取引推進機構 統計データより)
- 宅地建物取引士 男女・年齢階層別就業者数
宅地建物取引士 男女・年齢階層別就業者数(クリックして拡大)
(一般財団法人不動産適正取引推進機構 統計データより)
宅地建物取引士資格試験(宅建試験)とは
- 宅地建物取引業を営もうとする者は、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)に基づき、国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受ける必要があります。
- 免許を受けるに当たり、その事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して、国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならないとされています。
- 宅地建物取引士になるためには、まず、宅建業法で定める宅地建物取引士資格試験(平成26年度までは、宅地建物取引主任者資格試験)に合格しなければなりません。
- 試験は、宅建業法第16条の2の規定に基づき、昭和63年度から一般財団法人不動産適正取引推進機構が、国土交通大臣より指定試験機関として指定を受け、各都道府県知事の委任のもとに実施しています。
- 試験実施の概要
宅地建物取引業に関する実用的な知識を有するかどうかを判定することに基準が置かれています。(宅建業法施行規則第7条)
試験の内容は、おおむね次のとおりです。(同第8条)
1.土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。
2.土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。
3.土地及び建物についての法令上の制限に関すること。
4.宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。
5.宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。
6.宅地及び建物の価格の評定に関すること。
7.宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。
平成30年度の合格者数は、32,644人。合格率は、15.6%です。合格者が、都道府県知事の登録資格を受けるには、実務経験が必要になります。実務経験がない人は、実務経験に代わる「宅建実務登録研修」を受ける必要があります。
サーチファーム・ジャパンのサービス
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参考・引用
・宅地建物取引士(ja.wikipedia.org)
・37条書面とは(athome.co.jp)
・宅建士とは?仕事内容と就職で資格を活かせる業界は(allabout.co.jp)
・宅地建物取引士の統計概要(retio.or.jp)
・宅建試験(retio.or.jp)
・宅建(宅地建物取引士)の平均年収(heikinnenshu.jp)