優秀な社長には、少なくとも3種類の部下を持つことが好ましいと言われています。
秘書役的部下とは、社長が指示したことをそのとおりに実行する、あるいは周囲に伝える部下です。社長の指示に私見を入れずに伝達できる部下は貴重といえます。社長が自分の考えなり政策、戦略を社内に徹底したいと思うならば、このような秘書役的部下を持つことが必要ということになります。
参謀役的部下とは、社長に対して積極的に助言、諫言(かんげん)できる部下です。社長の指示なり戦略には是正すべきところがある、あるいはまったく別の指示・戦略のほうが好ましいと思ったときに、異論を述べることに躊躇しません。丁寧な物言いをしつつも、社長に対してきちんと別の意見を提示できる部下が、参謀役的部下と言えるでしょう。
また、ときに社長が出した指示がつねに正しいということはありえません。補佐役的部下とは、そのとき、諫言しません。社長の好ましくない政策であってもまったく否定しません。
数日、数カ月、時に1年以上ということもありますが、やがて、しっかりと成果を出す。そういうことができる部下が補佐役的部下です。
経営参謀には、その時々の役回りがあり、このような秘書役、参謀役、補佐役を使い分けられるパーソンが理想とされます。
経営参謀の仕事
- トップの意思決定の精度を上げ、マネジメントをサポートし、かつ組織の業務精度を高めるという観点からとらえると、経営参謀に求められる基本的な役割は、大きく分けて次の3つがあげられます。
- 事業方針に関する現状分析と起案
- トップの意思決定、判断の精度を上げるために、事業運営や事業そのものについての現況分析(必要な情報の収集と、そこからの意味合いの抽出)と企画、提言を行います。
- 過去や現状について上手な「見える化」を進め、ことの因果を解きほぐし、取るべき方向性を検討できる状態をつくります。
- 必要に応じて、全社や事業の方針の企画、戦略の立案などを行います。
- 分析や「見える化」の技術や作法、そして社内外のスタッフに的確に指示できる知識や能力が求められます。
- 必要に応じて、外部のコンサルタント会社などと一緒に、分析、立案する場合は、外部の人間には、十分には伝わらない事業現場の実態について、そのリアルなイメージを自分の言葉で言語化することもあります。
- ロジックを論じる前段階の、五感も含めて得られる事業の肌感覚を持つことが大事です。
- 社内の『神経系統』づくり
- 市場や社内の実態についての情報が経営層にまで適切に共有されるとともに、経営の意思を各部署に展開するための指示・報告系統が正しく機能し、さらに各部署が自律的に判断して動ける状態をつくり上げる仕事です。
- 鍵になるのが、報告や会議で使われる帳票の書式とも言われています。各部門の成果の検証C(Check)と企画P(Planning)のための発表用帳票フォームや、報告の場となる会議の設計が行われますが、まさにここでは、その巧拙が表れます。
- 求められのは、「マネージャーが帳票を使ってPDCAを廻し、組織全体が学習を積み重ねる状態をつくる」「問題解決に必要な「思考の流れ」の表現」になります。
- 企業が健全に機能し、学習するために必要な「神経系統」を構築します。
- 課題の優先順位付けと課題プロジェクトへの対応
- 様々な経営課題を明らかにすること、そして必要に応じた特命プロジェクトへの対応になります。
- 大事故につながる品質問題など、予期していなかった突発的な出来事への対処が必要になることがあり、そこではトップと同じ目線を持ったものによる対応が必要になります。
- 企業の業務の中で、様々な経営課題への対応が必要になります。
企業は、その事業規模が大きくなるにつれて、従来のやり方のままでは今のビジネスに求められる精度の情報把握が難しくなり、意思決定の精度が下がるものです。社長にとっても、事業の規模の小さい創業期は現場だけを見ていればよかったものが、事業規模が大きくなるにつれ、自分の視界に入る情報だけでは事の因果の把握が困難になります。
正しい意思決定に必要な角度から把握できる仕組みが求められます。経営者の視点を持ちながら、現場の業務を理解し、具現化するのが経営参謀の大きな役割です。
経営参謀の基本姿勢とマインドセット
- 問題解決の基本は、MECE×ロジックツリー+仮説思考
- 冷静、素直、そして客観的な観察眼
- 上手に「見える化」を行うだけで、ほとんどの問題は解決する
- 「見える化」の工夫の手間は、惜しんではいけない。
- 仮説思考を実践する
自分の得た情報から仮説を想定
→ その仮設の真偽を明らかにするために、更に必要とする情報を集めて「見える化」を行う
→ その過程、その結果からさらに次の仮説を考え、ど真ん中の答えを探していく
経会社はトップだけではまわせません。成長するもしないも、経営参謀の働きいかんだと言えます。イエスマンになるのではなく、きちんとトップに進言し、時には苦言を呈すことが重要です。
経営参謀に必要なスキル
- 会社内を横断し、各事業部と連携して仕事を進めるため、コミュニケーション能力、社内調整力、交渉力が必要です。
- 経営に関する数字を読み解き、正確に判断をしなければなりませんので、経理・財務の知識が必要です。
- 変化する市場の中で、業績を伸ばす戦略、新しい収益源について常に考え続けます。新しいアイデアの発想力、またそれを形にする力。
- 社長の右腕として動くと共に、日々の市場調査やデータ収集、資料作成などの事務作業に追われるため、同時にいくつもの案件を同時にこなす能力、スピード感。
- 経営陣や事業部長、社員に向けての社内プレゼンを行う機会が多い為、プレゼンテーション能力と物事をシンプル且つロジカルに説明するスキル。
- 常に計画、行動、修正を重ねて企業活動の発展に貢献する仕事ですので、PDCA(企画[Plan]→実行[Do]→点検[Check]→改善[Action])をまわす習慣と能力。
小規模の会社であれば、経営に関することは社長自身が担っている場合もありますが、規模が大きくなるほど「経営企画部」「経営企画室」などという専門の部署が置かれることが多いです。経営企画は「会社の舵取り役」「企業の頭脳」と言われることもあります。経営参謀は、経営企画室の中でも、実力者と評価されます。時には、経営企画から外れて、経営者直属の組織に属することもあります。
経営参謀の業務内容
- 経営企画部門の実態 (日本総研調べ)
「主管部門として担当」している業務のランキング
(クリックして拡大)
「十分または一定程度適切な役割を果たしている」業務のランキング
(クリックして拡大)
会社全体としての課題(テーマ別)
(クリックして拡大)
会社全体としての課題(社員の意識)
(クリックして拡大)
経営企画部門の実態 (株式会社日本総合研究所 総合研究部門 経営企画機能研究チーム) 874 社に聞いたアンケート調査結果による
経営参謀に関わる資格
- 一般社団法人日本経営心理士協会が、「ビジネスコミュニケーション心理士」、「組織心理士」、「顧客心理士」の3種類の資格を認定しています。
- また、経営心理入門を受講し、これら3つの資格を取得された方に「経営心理士」の資格を認定しています。
- ビジネスコミュニケーション心理士
コミュニケーション心理士は、人間の心の構造とコミュニケーションの構造を理解し、数百件の経営やビジネスの各場面で成果を出している実践的なコミュニケーションスキルを身に付けると共に、影響力を高めるための感情の管理の仕方、自身の在り方、意識の持ち方を学び、体現することで、経営やビジネスにおけるパフォーマンスを大きく上げることを目的とした資格です。
- 組織心理士
組織心理士は、部下との関係の改善、モチベーションの向上や人材育成、採用、人事評価、組織拡大のための仕組み作り、リーダーシップといった分野に関する成功事例とその効果を高める心理学、脳科学の知識を体系的に学ぶことで、人と組織を成長させるための実践的なスキルと専門能力を身に付けるための資格です。経営者や管理職、リーダーとして人と組織を成長させたい、コンサルタントや専門家としてクライアントの会社の人と組織の成長を支援したいという方に最適な資格です。
- 顧客心理士
顧客心理士は、顧客との関係創り、顧客の心を掴む表現、商品・サービスのメニュー構成、業務提携、営業人材の育成の切り口から、①新規顧客数、②客単価、③購買頻度を伸ばし、売上を増加させるための成功事例とその効果を高める心理学、脳科学を体系的に学び、営業やマーケティングの実践的なスキルと専門能力を身に付けるための資格です。経営者や営業職、マーケティング担当者として売上を伸ばしたい、コンサルタントや専門家としてクライアントの会社の売上を伸ばしたいという方に最適な資格です。
- 経営心理士
経営心理士は、人を育て、更なる売上を獲得し、組織を成長・拡大させるために必要な現場の成功事例と心理学、脳科学の知識、そしてそれを実現するために求められるコミュニケーション能力、影響力を発揮し、経営の諸問題を総合的に解決すると共に、会社の更なる発展を実現させるための資格です。経営者や管理職として経営の諸問題を解決して会社を更に成長させたい、コンサルタントや専門家としてクライアントの経営の諸問題を解決して会社を更に成長させたいという方に最適な資格です。
事業継承と経営参謀
- 年々、経営者の高齢化が進行していく中、「事業承継」が課題となっているオーナー企業が増えています。
- 事業承継には様々な問題があり、代表的な例としては、以下のような問題があげられます。そもそも後継者がいない/相続、納税に関する問題/古参経営陣との軋轢などから世代交代がスムーズに進まない。
- これらのうち、「世代交代がスムーズに進まない」といった問題を経営参謀に期待することが多い。次世代の経営陣を構築し、新社長を支える「右腕」的存在の採用ニーズが高まっています。
- 具体的には、以下の点について要望が高い。
- 新社長、次世代経営者と同世代ながら、最先端の経営について議論できる
- グローバル展開や新規事業など、会社にとって未知の領域をリードできる
- 社長と社員の間に入り、その意志を浸透させる
- 社員の行動変革を牽引する
今後十数年の間に、日本の多くの企業が事業承継、経営者交代の必要に迫られます。ますますニーズの増大するオーナー会社の次世代経営幹部、新社長の「右腕」といったポジションは、今後さらに増え、注目を集めることになるでしょう。
サーチファーム・ジャパンのサービス
サーチファーム・ジャパンでは、「経営参謀エキスパート」エグゼクティブサーチ・ヘッドハンティング・採用支援において、確かな実績と支援体制がございます。
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- 03-3221-3481
参考・引用
・超一流の社長は、「3種類の部下」を従えている(toyokeizai.net)
・企業の参謀役が果たすべき3つの役割(diamond.jp)
・戦略参謀の仕事――プロフェッショナル人材になる79のアドバイス (稲田将人著)
・経営企画/経営者の参謀! ~日本の仕事・職種INDEX ~(nextinjapan.com)
・認定資格について(keiei-shinri.or.jp)
・経営企画部門の実態(jri.co.jp)
・オーナー企業の事業承継を支える、次世代経営者の「右腕」~今、ポストコンサルに求められる8つのこと③(concord-career.com)